相続税は廃止されない? ガソリンの暫定税率の半世紀を経た廃止との違いと、相続税が残り続ける3つの理由

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太田 篤弘

太田 篤弘

ガソリン税は廃止されるのに、相続税は?

令和7年末、ガソリン等に対する旧暫定税率を廃止する法案が、参議院本会議で可決・成立しました。

これにより、ガソリンの旧暫定税率は令和7年12月31日に廃止され、軽油引取税の旧暫定税率も令和8年4月1日に廃止される予定です。

1974年の導入から約50年、暫定的に続いてきた歴史に終止符が打たれます。

一方、SNSでは
「相続税は明治38年に日露戦争の戦費調達を目的として導入されたが、まだ廃止されないのか?」
などの意見も見かけます。


相続税導入の歴史と制度の役割を整理し、「相続税は廃止されない」と考える理由をわかりやすく解説します。

ガソリン税は下がるのに、相続税はどうなのか

1.相続税の歴史

まず、日本の相続税は、明治38年に日露戦争の戦費調達を目的として導入されました。
ここまではガソリン暫定税率と少し似ていますが、決定的に違う点があります。

「臨時税」ではなく、初めから“恒久的な税”として設計されていた、という点です。

そのほか、導入から日が浅かったことや、戦勝国でありながらロシアから賠償金を得られず、政府財政が厳しかったこともあり、相続税は存続することが決まり、そのまま100年以上にわたって続いています。

2.民法改正

戦後、日本国憲法の施行に伴う民法改正で、「家督相続制度(長男が全て相続)」が廃止され、現在のような個人単位の遺産相続制度へと大きく舵が切られました。

これに合わせて相続税法も全面改正され、「家の財産」から「個人の財産」へと課税の考え方が大きく変化しています。

つまり、相続税は「戦費調達の財源」からスタートしつつも、

戦後は「家制度の廃止」「個人の権利尊重」といった社会の変化とともに、国の税制・社会政策の一部として組み込まれてきた恒久税という位置づけになっています。


相続税とガソリン暫定税率の決定的な違い

ガソリン税の「暫定税率」は昭和49年、道路整備の財源確保を目的とした「当分の間」の「上乗せ税率」として導入されました。

つまり、ガソリン暫定税率は「本則に一時的に上乗せした部分」であり、
今回の廃止は本則のガソリン税を残したまま、「上乗せ部分だけ」を半世紀かけてようやく外すという整理です。

これに対して相続税は、税そのものが最初から恒久税として設計され、
その後の改正も「税率や控除額の調整」であって、「相続税という仕組みそのものをやめる」という議論は現実的な選択肢になっていません。

この成り立ちの違いが、「ガソリン税は一部が廃止されるのに、相続税は残り続ける」第一の理由です。

「相続税は廃止されない」三つの理由

相続税には、大きく次の三つの役割があります。

1.富の再分配
2.偶然性の高い不労所得への課税
3.所得税の補完

これらを以下で整理していきましょう。

1.富の再分配

相続税の第一の趣旨・役割は、「富の再分配」です。

相続に税金がかからなければ、資産家の家庭では世代を超えて資産が積み上がり続け、
そうでない家庭との差がどんどん広がっていきます。

相続のタイミングで一定割合を税として回収し、その税収を社会保障や教育、インフラなどに回すことで、
過度な資産の集中にブレーキをかけ、格差の固定化を防ぐという考え方です。

格差と社会不安が世界的なテーマになっている中で、「富の再分配」という機能を丸ごと捨てる決断を政治がする可能性は、現実的には高くないと考えます。



2.偶然性の高い「不労所得」への課税

二つ目は、「偶然性による不労所得への課税」という役割です。

多くの人は、働いて給料や事業所得を得て、そこに所得税を負担しています。
一方で、相続財産は、自分が働いて稼いだお金ではなく、親や祖父母が築いた財産を引き継ぐものです。

どれだけの財産を相続できるかは、

・どの家庭に生まれたか
・親族がどれだけ資産を持っているか

といった「偶然」に左右される側面が大きいと言えます。

この偶然性の高い不労所得に、所得税とは別枠で一定の負担を求めることで、
働いて所得税を払っている人とのバランスを取ろう、というのが相続税の二つ目の役割です。

3.所得税の補完としての「清算機能」

三つ目は、「所得税の補完」という機能です。

所得税には多くの非課税や軽減措置があり、上手に制度を使えば手元に残る財産を増やすことができます。
その結果として、「生前の所得税だけでは十分に捕捉しきれていない富」が、相続の時点で多額の財産となって残っている場合があります。

そこで、「生前の所得税で取り切れなかった分を、最後に相続税として一度清算する」という役割を相続税が担っている、という整理です。

もし相続税を廃止してしまうと、この「清算」の機会がなくなってしまい、
所得税の負担だけでは埋められない不公平感が一段と強まるおそれがあります。

結論

相続税の趣旨・役割は前項で述べた通りですが、

一方SNSでは、
「いやいや、たくさん税金をとられた後のお金で生活費を捻出して、その残りカスで作り上げた財産に課税するな!二重課税じゃないのか!」
などの意見も見かけます。

まぁ…、気持ちは分かります。笑


税制全体は、所得税、法人税、消費税、資産課税(相続税・贈与税)
がそれぞれ役割分担をしながら、バランスを取るように設計されています。


この中で、相続税だけを切り離して廃止してしまうと、


・富の再分配が弱まり、格差が固定化する
・不労所得への課税がなくなり、公平感が損なわれる
・所得税で取りこぼした部分の清算機能が失われる


といった問題が一度に顕在化してしまいます。

そのため、現実的には

・税率や控除額の見直し
・贈与税との一体的な改正
・資産課税全体の「強める」「緩める」といった調整

は今後も起こり得るものの、「相続税そのものを廃止するという方向性は、政策的にも取りにくい」と考えるのが妥当だと思います。



以上、今回は相続税の廃止について書いてみました。

税理士法人ティームズでは、相続税の申告はもちろん、相続に関する相談も随時受け付けております。

疑問や不安があれば、
相続税に強い税理士に一度ご相談されることをおすすめします。

参考
出展 : 国税庁「相続税100年の軌跡
出展 : 国税庁「解題|【第七巻】|租税史料叢書|税務大学校

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この記事を書いた人

太田 篤弘

太田 篤弘

平成8年2月11日生まれ
出身:大阪生まれの大阪育ち
趣味:アニメ・映画鑑賞、漫画、筋トレ
美味しいものが好きです!
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頼れる税理士を目指して日々精進です。