売上が1億円を超えると、「なんとなく」では会社が回らなくなります。 スタッフも増える、取引先も増える、支払いも増える、借入も増える。
ここで社長が決算書を読めないままだと、何が起きるでしょうか。 黒字なのにお金がない、売上は伸びているのに利益が薄い、気づいたときには銀行との交渉が厳しくなっている——そういう「詰み」が現実に起きています。
完璧に読める必要はありません。 ただ、最低限この4つの数字だけは、必ず押さえておいてください。
・預金比率(いま払える力があるか)
・自己資本比率(倒れにくいか)
・売上総利益率(ちゃんと儲かってるか)
・損益分岐点(赤字にならないラインはどこか)

① 預金比率:社長が最初に見るべきは「利益」ではなく「お金」
利益は会社の成績表です。 しかし現金は、会社の酸素です。酸素が切れたら終わりです。
ここでは実務的に、預金比率を 「現金・預金 ÷ 流動負債(近いうちに支払うお金)」 として考えます。
売上1億円を超えると、支払いの額も桁違いになります。 仕入、外注、人件費、家賃、税金、返済……「今月だけで数千万」という月も出てきます。
預金比率が弱い会社は、典型的にこうなります:
・取引先の入金が少し遅れただけで資金繰りが厳しくなる
・売上は伸びているのに、運転資金が足りない
・「賞与の月」「納税の月」への対応が困難になる
・黒字なのに追加借入が必要になる
売上規模が上がった会社ほど、ここを見逃すのは危険です。
② 自己資本比率:体力が落ちると、銀行も取引先もシビアになる
次が自己資本比率です。 簡単に言えば「会社の土台の強さ」を示す指標です。
自己資本比率が低い状態を放置すると何が起きるか。売上が落ちたときに耐えられないのはもちろんですが、もっと現実的な影響として:
・銀行との対話が「成長投資」から「守り(条件変更や追加担保)」の話へシフトする
・わずかな赤字でも評価が大きく悪化する
・大型投資や採用の判断に踏み切りづらくなる(攻めの経営ができなくなる)
決算書をしっかり見ていない社長は、自己資本比率の低下に気づくのが遅れがちです。 「気づいたときには回復に年単位を要する」というケースも珍しくありません。

③ 売上総利益率:売上が伸びるほど「薄利」は会社を壊す
売上1億円を超える会社で、非常によく見られる落とし穴がこれです。
売上は伸びた。しかしお金が残らない。 このとき、まず疑うべきは**売上総利益率(粗利率)**です。
売上総利益率は、ざっくり言えば 「売上から仕入・材料費・外注費を引いた後、どれだけ残るか」 を示します。
売上規模が大きくなると、粗利率がわずかに落ちただけでダメージが大きくなります。 売上が増えれば「忙しさ」も増えます。しかし粗利が薄い仕事ばかり増えると、忙しいだけで会社が疲弊します。
確認すべきポイントは:
・値引きが常態化してないか
・原価や外注費が上がってないか
・利益の薄い案件に引っ張られてないか
売上を追う前に、“粗利が残る仕組み”をチェックする。 これが社長の仕事です。
④ 損益分岐点:知らなければ、固定費がいつの間にか会社を圧迫する
最後が損益分岐点です。 これは「利益がゼロになる売上」のことを指します。
売上1億円規模の会社は、固定費が重くなる傾向があります。 人員増、拠点、家賃、リース、システム、広告…… 固定費は、いったん増やすと簡単には減らせません。
そのため、損益分岐点を把握していない社長は危険です:
・売上が何%落ちたら赤字になるか分からない
・人員を増やした結果、赤字ラインが上がったことに気づけない
・仕入や外注の増加で「見かけの売上」だけが増えている
・「売上が戻れば大丈夫」が、根拠のない希望になる
損益分岐点を把握している社長は、判断が速い。 把握していない社長は、判断が遅れる。 この差が、1年後の結果に表れます。

まとめ:決算書が読めない社長ほど「後手」になる
売上1億円を超えた会社では、社長の意思決定の精度が直接利益に影響します。 そして、その意思決定の精度は、決算書を「最低限」読めるかどうかで大きく変わります。
難しい指標は必要ありません。 まずはこの4つだけで十分です:
✓ 預金比率 – 支払いに耐えられるか
✓ 自己資本比率 – 会社の土台は強いか
✓ 売上総利益率 – 儲かる構造になっているか
✓ 損益分岐点 – 赤字にならない最低ラインはどこか
この4つを押さえるだけで、社長としての判断が変わります。
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