2026年1月から、長年運用されてきた「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」が、
より広い取引関係を対象とした 「取引適正化推進法(以下、取適法)」 へと大きく生まれ変わる予定です。
今回の改正は、これまで下請事業者の声として多かった
「振込手数料の負担」「価格転嫁に応じてもらえない」
といった課題に対し、国が踏み込んだ対応を行うものです。
中小企業・個人事業主・フリーランスとの取引を行う事業者にとって、
実務にも影響が出る重要な改正となりますので、ポイントを分かりやすくまとめます。

◆ 下請法改正の背景 〜 なぜ見直されるのか?
近年、元請と下請の力関係を背景にした取引慣行が問題視されてきました。特に、
- 振込手数料を下請側に負担させる
- 原価高騰が続く中でも「値上げ交渉に応じてもらえない」
- デザイン・IT・広告・コンサル等の 役務提供型フリーランス が下請法の適用外になりやすい
といった課題が顕著になっており、
経産省は「より幅広い事業者を保護する新たな法体系が必要」と判断したものです。
こうした流れを受け、2026年1月から 下請法 → 取適法 へと改正される見通しです。
◆ 主な改正ポイント
① 振込手数料を下請に負担させることが禁止される
今回の改正で最も注目されている点です。
これまで「慣行」として、銀行振込手数料を下請側に負担させているケースが多く見られましたが、
新法ではこれが 明確に禁止行為 となります。
▼ 実務への影響
- 今後は 元請側が振込手数料を負担するのが原則
- 支払通知書・契約書の見直しが必要
- “手数料差し引き支払”は違法行為に該当する可能性
経理処理も修正が必要となるため、影響は小さくありません。
② 適用範囲が大幅に拡大(フリーランス・個人事業主も保護対象へ)
新しい取適法では、保護対象が大きく広がります。
従来の下請法は、製造委託・情報成果物作成・修理など、
比較的“モノづくり寄り”の取引に焦点が当たっていました。
しかし今後は、
- エンジニア
- デザイナー
- ライター
- 広告運用
- 事務代行
- コンサルタント
などの役務提供型フリーランスまで広く対象に含まれる見込みです。
中小企業が外部委託している業務の多くが新法の射程に入ることとなり、
企業側の対応が求められます。
③ 値上げ交渉への不当な拒否が禁止に(価格転嫁の適正化)
人件費や材料費が高騰する中でも、「値上げをお願いしても応じてもらえない」という声は多いものです。
新法ではこれに対し、
正当な理由がないのに値上げ交渉を拒否する行為 が明確に禁止される方向です。
これにより、下請側が適正な対価を受け取れるよう環境整備が進みます。
④ 契約内容の明示義務が強化(電子交付が基本へ)
契約条件を曖昧なままにせず、明確に書面または電子データで交付する義務が強化されます。
- 業務内容
- 納期
- 料金
- 検収条件
- 支払時期
などを明確に定める必要があり、取引の透明性が高まります。
電子契約や電子通知の活用が進むでしょう。
⑤ 違反企業名の公表が拡大へ
これまでの下請法でも違反企業名の公表制度は存在していましたが、
新法では より積極的に企業名を公開する方針 となっています。
信用リスクが高まるため、企業にとって遵守すべき意識が高まります。
◆ 企業が今やっておくべき3つの準備
取適法は、元請企業に特に大きな影響を与えます。
顧問先への注意喚起としても、以下のポイントは重要です。
① すべての委託契約書を見直す
特に以下の条文をチェックしてください:
- 振込手数料の負担条項
- 価格改定(値上げ・値下げ)に関する条項
- 委託料の算定方法
- 支払サイト
- 電子契約の扱い
② 振込手数料をどう処理するか、社内ルールを整備
銀行振込の実務フローを
「下請負担になっていないか」
必ず確認する必要があります。
③ 外注フリーランスとの取引実態を棚卸しする
特にIT・広告・建設・不動産管理業では、
外注比率が高く、新法の対象範囲に広く含まれる可能性があります。
顧問先の業務実態を把握し、必要に応じて助言することが有益です。
◆ まとめ:2026年の大改革。今から準備を。
今回の法改正は、単なる名称変更ではなく、
「振込手数料の負担禁止」「対象範囲の拡大」「価格転嫁の義務化」 という、
中小企業の実務に直結する大きな改革です。
2026年1月の施行に向け、今から対応を進めることで、
取引トラブルの防止や企業体質の強化につながります。
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