【相続税】生前に立替えた生活費・医療費は債務控除できる?

#相続税
中西 灯

税理士

中西 灯

相続税の申告でよくあるご質問が、
「生前に家族が生活費や医療費を立て替えたけど、相続税の債務控除になりますか?」
というものです。

実はこの問題、
結論から言うと 「立替えた相続人が扶養義務者かどうか」で取扱いが大きく変わるため注意が必要です。

この記事では、相続実務でよくあるケースを例に、債務控除の可否をわかりやすく解説します。

■ 結論:扶養義務者が立替えた生活費や医療費は、原則として債務控除にならない

相続税における「債務控除」とは、
被相続人が亡くなった時点で負っていた返済義務のある負債を相続財産から差し引ける制度です。

ところが——

★扶養義務者(配偶者・子・孫など)が立替えた生活費・医療費は、原則として『負債』と認められない

というのが基本ルールです。

なぜなら、生活費や医療費は、扶養義務者が負担することが法律で想定されているため、
「本来払うべき義務が被相続人にある」と認めにくいからです。

つまり、よくある

・子どもが親の病院代を立て替えていた
・子が日常生活費を負担していた

こういった多くのケースでは、
相続税の債務控除は原則×(不可)
となります。

■ 扶養義務者・非扶養義務者別の取扱い

以下に、典型的なパターンをまとめます。

①【最も多いケース】相続人=扶養義務者が立替えていた → 原則「債務控除×」

扶養義務者とは、
民法上の直系血族・兄弟姉妹など、相互に扶養義務がある関係を指します。

特にもっとも多い例が、
子や配偶者が立替えているケース

●対象にならない立替え例

入院費・医療費

薬代

介護費

生活費(食費・光熱費など)

デイサービス代

通院時のタクシー代

これらは、
扶養義務の範囲内の支援であり、法的な返済義務がある「借金」とは扱われないためです。

●例外的に認められる可能性があるケース

扶養義務者でも、以下のような場合は債務と認められることがあります。

事前に被相続人と「必ず返す」という明確な合意があった

金額が生活費の範囲を大きく超える(高額な治療費など)

借用書がある

ただし実務上、
税務署は「扶養の範囲内」と判断しやすく、債務控除は認められにくい
というのが現場感です。

②相続人だが扶養義務者ではない人が立替えていた → 債務控除〇の可能性が高い

相続人の中には、
甥・姪・いとこなど、扶養義務がない場合があります。

例えば、
被相続人:伯父
立替えた相続人:姪

姪は扶養義務者ではないため、
立替えが「通常の金銭消費貸借」と評価されやすく、債務控除が認められる可能性は高いです。

●この場合に必要な証拠

  • 立替えた事実がわかる通帳記録
  • 支払先の領収書
  • 立替えの趣旨がわかるメモやメール
  • 可能なら借用書や金銭消費貸借契約書

扶養義務者と比べてハードルは下がりますが、
証拠がなければ認められません。

③相続人ではない第三者が立替えていた → 債務控除〇

友人・知人などが立替えていたケース。

被相続人と扶養関係のないため、
立替え=借金と評価され、債務控除が認められやすいです。

ただし当然ながら、
立替えを示す客観的資料は必須です。

■ 証拠はとても重要|立替金と認められるために必要な資料チェックリスト

債務控除を主張する場合、必ず以下を揃えましょう。

  • 通帳の入金・支払い履歴
  • 領収書・請求書
  • 立替えの経緯がわかるメール・LINE・メモ
  • 返済予定の記録(借用書・契約書・念書)

■ まとめ:最後に大事なポイント

✔ 扶養義務者が立替えた生活費・医療費 → 原則債務控除×

✔ 扶養義務者でない相続人 → 債務控除〇の可能性が高い

✔ 立替えと認めてもらうには「客観的証拠」が必須

✔ 借用書があると非常に有利

✔ 特に生活費は「扶養の範囲内」と判断されやすい

相続税の申告では、立替金の扱いは税務署との争点になりやすいポイントです。
立替えをしていた場合は、早めに書類を揃えておくことが大切です。

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この記事を書いた人

中西 灯

税理士

中西 灯

平成3年9月22日 兵庫県神戸市生まれ
平成26年12月 税理士試験 官報合格
平成27年11月 税理士登録(登録番号131411)
第128回日商簿記1級 全国模試1位
お酒と食べることが大好きです。
趣味はペットのうさぎ・チンチラを触ること
大阪で一番相談しやすい税理士を目指します。