老老相続で要件が満たせない?2025年問題が“小規模宅地の特例”に突きつける課題

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中西 灯

税理士

中西 灯

2025年問題と呼ばれる「団塊世代の全員が75歳以上になる年」を目前に控え、相続税対策を考えるご家庭が急増しています。

その中で注目されているのが 「小規模宅地等の特例」。相続財産の評価額を大きく減らせる制度ですが、高齢化社会特有の“老老相続”では、要件を満たせないケースが増えてきています。

本記事では、2025年問題と老老相続が小規模宅地等の特例に与える影響をわかりやすく解説し、今からできる対策を税理士の視点でお伝えします。

小規模宅地等の特例とは?

まず制度を整理しましょう。

  • 自宅や事業用の宅地を相続した場合、最大80%の評価減が可能。
  • 適用できれば相続税の負担が大幅に軽減される。
  • ただし 「同居親族」や「生計一親族」 といった要件を満たす必要がある。

この「要件」が、老老相続において壁になるのです。

老老相続が直面する課題

1. 被相続人・相続人ともに高齢

  • 被相続人:85歳
  • 相続人(子):60歳以上
    こうしたケースでは、相続人がすでに別居していたり、自宅を構えているケースが多く、「同居」や「生計一」要件が満たせないことが増えています。

2. 空き家リスクの増加

親世代が亡くなり、子世代が自宅を引き継がないと、宅地は空き家化。特例を受けられず評価額がそのまま課税対象になることも。

3. 成年後見制度の利用拡大

認知症対策として成年後見制度を利用する家庭が増えていますが、後見人が財産管理を行うと「居住の実態」が形式的に欠けると判断され、特例の適用が難しくなる事例も出ています。とが重要になっています。

2025年問題で何が変わるのか?

  • 団塊世代が一斉に高齢化 → 老老相続の発生件数が急増
  • 相続人の生活拠点が都市部・別居先にあるケースが多数 → 要件不適合が増加
  • 特例が使えない場合、課税対象額は数千万円単位で増加する可能性あり

つまり、「これまで当たり前に使えていた特例が使えない」という状況が、これから一気に表面化します。

今からできる相続対策3選

1. 早めの同居・生計一の確保

特例を狙うのであれば、相続発生直前ではなく数年前から同居・生活費の共有を始めることが重要です。

2. 家族信託・生前贈与の活用

  • 家族信託で自宅の承継先を指定しておけば、認知症による要件不適合を防止できます。
  • 生前贈与を使って早めに財産を移転しておくのも有効。

3. 空き家になる宅地の用途転換

貸付事業用宅地(駐車場・賃貸住宅など)に変えることで、別の特例が使える可能性があります。


2025年問題によって顕在化する「老老相続」は、これまで当然のように利用できた小規模宅地等の特例を適用できないリスクを増大させています。

  • 要件を満たせるかどうかは、数年前の暮らし方で決まる
  • 空き家対策や信託・贈与の活用でリスクを軽減できる

相続税は「発生してから」ではなく「発生する前」が勝負です。ぜひ早めに専門家にご相談ください。


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この記事を書いた人

中西 灯

税理士

中西 灯

平成3年9月22日 兵庫県神戸市生まれ
平成26年12月 税理士試験 官報合格
平成27年11月 税理士登録(登録番号131411)
第128回日商簿記1級 全国模試1位
お酒と食べることが大好きです。
趣味はペットのうさぎ・チンチラを触ること
大阪で一番相談しやすい税理士を目指します。